台風19号による豪雨で甚大な被害が出ています。今回の災害で亡くなった人は58人となり、堤防の決壊は、37河川の52か所に上っています。まだ全容が判明していない部分もあり、今後被害はさらに拡大する恐れもあります。今回の台風で被害に遭われた方に心からお見舞い申し上げます。
地球温暖化の進行と同時に頻繁に発生する天候災害
日本を襲った天候災害としては、昨年7月の西日本豪雨、9月の台風21号の被害が記憶に新しいですが、近年、日本のみならず、世界中で異常気象の増加や天候による災害の被害拡大が報告されています。世界気象機関は、世界各地で相次いでいる異常気象それぞれの直接の原因は地域ごとに異なり、地球温暖化のせいだと断定することはできないと断った上で、こうした猛暑や豪雨などが増加しているのは、長期的な地球温暖化の傾向と一致していると警鐘を鳴らしています。
私たちの生存を脅かし始めた地球温暖化
何十年もの間、気候変動は経済的格差、あるいは「世界の不正義」を象徴する事象として取り扱われてきました。つまり、これまで温室効果ガスを排出してきた先進国を加害者とし、地球温暖化で海面が上昇して居住地を奪われる貧しい太平洋の島国や、温暖化によって干ばつや伝染病が増加して生命が脅かされているアフリカの人々を被害者として、このような不正義を正すために温暖化を是正しなければならない、という「正義」の問題として取り組まれてきた問題であった面は否めないと思います。もちろん、その議論は間違ってはいませんが、千人以上の死者を出したフランスの熱波、アメリカでの大規模な山火事、そして日本での極端な豪雨などの発生は、地球温暖化が、インフラの整った先進国にも致命的な影響を及ぼし始めたことを示しています。
9月に開催された国連気候行動サミットにおいて、グレタ・トゥーンベリさんというスウェーデンの少女が行ったスピーチは大きな注目を集めました。いかに、地球温暖化が未解決のまま放置されている問題か、改めて国際社会の関心を集める結果となれば幸いですが、求められているのは、日本を含む世界各国による具体的な行動であるということは、言を待ちません。
天候災害に対処しながら地球温暖化問題に取り組む
長期的には、二酸化炭素やその他の温暖化ガスの排出をほぼゼロにまで削減する、徹底的な脱炭素化が必要になります。しかし、この実現には数十年単位の時間が必要です。だからこそ、短期的には、気候変動によって生じる極端な天候災害や伝染病の増加、干ばつなどに対処しするための、インフラ整備や災害対応の体制の見直しや増強が求められます。
なかなか認めづらいことですが、気候変動が私たちの住む地球の環境をすでに大きく変えてしまたっという事実を受け止めて、その影響を取り除く脱炭素社会の実現などの環境保全の努力を長期的な視点で進めながら、気候変動によってもたらされる様々な災害や疫病に対処する命を守る戦いに、日本社会も全力で挑んでいかなければならないと思います。