新年あけましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
今回は、英国のEU(欧州連合)離脱問題について書きたいと思います。2016年に国民投票で英国がEUからの離脱を決めてから、早くも2年あまりが過ぎましたが、この問題はますます混迷を深めているようです。離脱の方法を巡って、英国政治が「決められない政治」の様相を呈しており、英国議会は15日、メイ政権が提示した欧州離脱の条件を定める離脱案を、大差で否決しました。
EUは離脱案の再交渉を拒否しているため、このままいけば、「移行期間」無しでの離脱が現実のものとなり、突如として英国がEU市場から切り離されて、英国の金融や各種産業が、これまで依拠してきたEU域内のヒト、モノ、カネの自由な移動を保障した枠組みからはじき出されることになります。英国とEU諸国の間の通関、関税業務が発生すること、英国とEUで別々に許認可をとったりしなければならないことで、特に英国人や英国に所在する企業が直接的な害を被ることになりますが、それらが関連して、英国の経済活動に大きな支障をきたすことが懸念されます。
この離脱案というものは、EUと英国の両方が合意しなければ実現しないのに、英国議会議員は残留派も離脱派もメイ政権がEUと合意した離脱案を、彼らが望むものではないとして反対に終始し、現実的な対案が示されることはありませんでした。このままでは3月末に、合意なしの欧州離脱が現実のものとなって経済と金融に大きな混乱がもたらされることが容易に想像できるのに、まだその混乱が現実のものとなっていないので、なんとなく合意無しの離脱をしても大丈夫だろうタカをくくり、自分勝手な議論に終始する。戦後、戦勝国として自由主義陣営の筆頭格だった英国が、自ら国際的な地位を失い漂流の時代を迎える。どうやらそのことは不可避になりつつあるようです。
私は、2016年当時は米国議会の共和党下院議員事務所でインターンをしていたため、国民投票でEU離脱派が勝利した瞬間は、米国議会議事堂から程近いバーでそのニュースを同じ議会で働く仲間ととともに固唾をのんで見守っていました。そして、その翌月には、トランプ氏が共和党の大統領候補に選ばれた共和党大会の様子を同じバーのテレビで見ることになります。2016年に露見した、戦後の国際社会をけん引した民主主義諸国の動揺は、2019年になっても収まりそうになりません。
このような時代に、日本は何をなすべきか。私は、日本の政治が陥っている状況も、英国や米国の現在の混乱に非常に似た面があると思います。このままでは行き詰まることが分かっていながら、相変わらず金融緩和に頼り切って将来に大きなツケを残し、一方で、出生率の回復や経済の競争力強化に向けた抜本的な改革を先延ばしにする。議会政治は平成の30年間にわたり足の引っ張り合いばかりが目立ち、何ら新たな回答を生み出すことに成功していません。
次回は、日本の政治が今なすべきことを、書きたいと思います。